とまらぬ亀の轍

何をするにも鈍間な筆者が、歩み続ける足跡を綴っていきます。

米国のGI motility specialistってどんな仕事?

自分は現在アイオワ州にただ1人のGI motility specialistなのですが、日本の消内医から見ると何やってる人かピンとこないと思います。米国の患者さんも実は分かっていません。なぜなら所謂消化管運動障害は一般消化器内科医もNurse practitionerもPhysician assistantも皆診るからです。では何を特別にやっているのか?
 
1. 食道圧測定検査、直腸圧測定検査、食道pHモニタリング検査の解読、診断をし治療方針の助言をする。これがメインのお仕事。まだAI化しておらず、コンピュータの解読は間違いだらけなので手動で読んで診断し、その上で電カルで臨床経過も読み込んで最新のガイドラインや文献に従った治療方針の助言をする。
2. Anorectal Biofeedback therapyの解読をする。これはアイオワ大学で開発され、今や米国の直腸肛門協調運動不全型便秘(米国では便秘の約半数がこの型です。)の治療の第一選択となった理学療法ですが、この治療の経過の解釈と助言をする。便失禁に対してもこの治療法がとても有効です。
3. EndoFLIPという内視鏡下の食道検査を行い、他の検査と合わせて診断をして治療方針の助言をする。EndoFLIPはアイオワ州では私しかやっていないので全アイオワ州の患者と一部のイリノイ州の患者さんがいらっしゃいます。
4. 水素及びメタンを測定する呼気テストを用いて乳糖不耐症、果糖不耐症及び小腸内細菌異常増殖(SIBO)の診断と助言をする。
5. 胃運動不全症の患者の胃電気刺激器の管理をする。
 
要約すると、基本的には専門の知識と専門の機器を使った消化管運動障害の診断と助言を主にやっていて、沢山の消化管運動障害の患者さんを外来で診て治療しているという訳ではありません。
私の公式の労働割り当ては、現在勤務時間の50%が研究で10%がフェローの指導、20%が内視鏡検査と内視鏡治療で、10%で外来診療に当たっています。しかし、上記のような検査の読解に時間を取られる為、実質は30%が研究で20%が検査の読解、勤務時間外の時間を研究に充てるという生活をしております。